父親は夜明け前にバンクーバーへ発った。靴ひもを片方ほどいたまま、私道から呼ぶ制作アシスタントの声に急かされて。撮影は金曜にクランクアップの予定だった。どの金曜かは、誰も聞いていなかった。
その夜9時40分、クレセンティア・ヴィラは、カミラがもう出かけたあとのように見えた。
ヘアメイクチームが帰り、玄関のドアが閉まり、一台目の黒いSUVが私道を滑るように出ていった。テールランプを見たニナは、カミラもそれに乗っていったのだと思い込んだ。
違った。カミラは二階で壊れたドレスのファスナーと格闘していて、Orchid Recordsの周年記念ガラに遅刻しかけていた。メリンダ・ヴォスは二台目の車で待っていた。
キッチンのタブレットから、カミラのインタビュー映像が流れていた。
「ニナは歌いたいのかって、みんなよく聞いてくるの」とカミラは言った。「来月、あの子は私と一緒にオリジナル曲を披露するのよ。世界が追いついてくるのが待ちきれないわ」
当のカミラが現れた。半分までファスナーの上がったシルバーのドレスに、イヤリングは片方だけ、靴もはいていない。
「ねえ、助けてくれない? シルバーのイヤモニがスタジオAのコンソールの横にあるの。ファスナーが反乱を起こしてて、本当なら11分前に車に乗ってなきゃいけなかったのよ」彼女はあなたに投げキスをして、二階へ消えた。「ありがとう」
スタジオのドアは閉まっていたが、鍵はかかっていなかった。
ニナは赤いランプも、カミラのテンプレートも、効果音も、台本の一行一行も忘れなかった。忘れていたのは、鍵だけだった。
中では、赤い波形が中央のモニターをじわじわと進んでいた。その下にタイトルがある。
HUSH & CRINKLE — 厳しいお世話係:大人のおむつチェック
そのとき、スピーカーからニナの声が流れてきた。
カミラがシェアしていたTikTokのカバー動画の、あの明るい声じゃない。あなたをおまけ呼ばわりしたり、高いヨーグルトを食べきったと責めたりする声でもない。
もっと低く。もっとゆっくり。耳元に吐息がかかるような声。
「ルールは自分でサインしたでしょ」と彼女はささやいた。小さく息が詰まる——公開しているカバーと同じ、あの特徴的な息継ぎ。「おむつを替えてもらうのが好きだからって、自分が大人じゃないふりをするのはなし」
ビニールがカサカサと鳴った。ニナはマイクのそばでテープを一枚はがし、少し間を置いてから、もう一枚はがした。
「腰を上げて」
沈黙。
「いいわ」その言葉の終わりには、彼女がときどきTikTokのハモりの下に忍ばせる、低いハミングが残った。「大人は、自分で汚したものに責任を持つの」
ガラスの向こうで、ニナはカミラの金色のマイクを唇から数センチのところに据えて座っていた。ヘッドホンが耳をふさいでいる。くすんだブロンドのボブに、センター分けの前髪。サテンのパジャマの上に、丈の短い青いカーディガンを前を開けたまま羽織っている。効果音用のトレイには、大人サイズのおむつ、おしりふき、パウダー、おむつ替えシートが並んでいた。
シルバーのイヤモニのケースは、キーボードの横にあった。
開いたままのフォルダもあった。名前はカミラ・マルドウ — SNS用マスター。
中には、きれいなニナのボーカルファイル。その下に、もうひとつのファイル名が現れた。
HUSH_AND_CRINKLE_DIAPER_CHECK_FINAL.wav
共有チームに新しいマスターを同期中…
ニナは気づかないまま続けた。
「じっとしてて。チェックしてくれるくらい厳しい人がよかったんでしょ」
登録者数は、余裕の六桁。
あなたはコンソールへ一歩近づいた。床板がカチッと鳴った。
ニナが顔を上げ、ガラス越しにあなたを見た。
お世話係の声が消えた。顔が一瞬で真っ赤に染まる。譜面台にぶつかり、台本と大人用おむつがひらりと床に落ちた。
彼女は停止ボタンを叩いた。ブースは静まり返ったが、最後の一言だけが、まだコントロールルームのスピーカーから消えきらずにいた。
ニナはヘッドホンをむしり取り、ブースのドアを押し開けた。ケーブルがピンと張って、半歩引き戻される。
「何を聞いたの?」
答えたのは、モニターのファイル名だった。その下のアップロードバーは、まだ進んでいる。
ニナはあなたの視線を追った。床のおむつをひったくって背中に隠す。何の解決にもなっていない。
「あれは発声練習」早口すぎた。練習のところで声が裏返る。
二階からカミラの声がした。
「メリンダが、11分前に出てなきゃいけなかったって。見つかった?」
ニナはシルバーのイヤモニのケースから、モニターへ、そしてあなたへと視線を移した。
同期バーが78パーセントに達した。
「一言もしゃべらないで」
赤い録音ランプは、ついたままだった。
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📅 1日目
💛 ニナの好感度 0
❤️ カミラの好感度 0